Bowers & Wilkins(以下、B&W)は、イギリス発祥の老舗オーディオブランドである。スピーカーやホームシアターで知られるB&Wが、完全ワイヤレスイヤホンの分野でもハイエンドモデルを展開している。その中でもPi8は、B&Wのフラッグシップモデルだ。
本稿では、Pi8を実際に使用した上でのレビューを、音質、装着感、機能性、そしてスペックの観点からまとめる。

スペック
発売年:2023年
ノイズキャンセリング:ANC対応
通信方式:Bluetooth5.2
コーデック:SBC、AAC、aptX、aptX HD、aptX Adaptive
バッテリー:約5時間(イヤホン本体)、最大約20時間(ケース込)
充電方式:USB-C、Qiワイヤレス充電対応
デザイン/装着感
Pi8は、B&Wらしい上質なメタリックデザインを採用している。艶消し仕上げのシェルと、メタルプレートのアクセントが高級感を演出している。
装着感は、耳穴に優しくフィットする構造で、圧迫感も少ない。イヤーピースの種類も複数付属しており、耳型に合わせた調整が可能である。長時間の装着でも耳が痛くなることはなかった。

音質
Pi8の最大の特徴は、何といってもその音質の高さである。
- 高域:繊細で伸びやか。シャリつきがなく、弦楽器やハイハットの表現力が非常に高い。
- 中域:ボーカルの定位が非常に明瞭で、歌声が一歩前に出てくる。リスナーとの距離が近い。
- 低域:量感は控えめだが、引き締まりと輪郭がある。ベースラインを正確に再現してくれる。
全体としてバランスがよく、過度な味付けがない。そのためジャンルを問わず高音質で楽しめるが、とりわけジャズ、クラシック、アコースティック系との相性が抜群である。僕はそういった音楽はあまり聴かないのだが…
ノイズキャンセリング
Pi8のANCは、いわゆる「強力な遮断型」ではなく、「自然に雑音を抑える」タイプである。SONYやBOSEのような密閉感ではないが、B&Wは音楽との共存を意識したチューニングを施している。
電車やエアコンの音などには十分に効きつつ、人の声や環境音は程よく残る。このため長時間使用でも疲れにくく、音楽に集中できる環境を自然に作り出している。
バッテリー
バッテリー持続時間はイヤホン単体で約5時間、ケース併用で最大20時間。昨今の完全ワイヤレス市場では平均的な水準だが、音質重視モデルとしては十分なスタミナである。
さらに、Qi規格のワイヤレス充電にも対応している点は便利で、日常使いでのストレスが少ない。
気になる点
・ANCは弱めであり、強力な遮断を求める人には物足りない可能性がある。
・専用アプリのイコライザー機能は限定的で、細かい音質調整は不可。
・市場価格は5万円台と高額。コストパフォーマンスを重視するユーザーには不向き。
まとめ
B&W Pi8は、見た目・音・操作性の全てにおいて高級感を求める人に相応しい一台である。完全ワイヤレス市場における音質の基準を一段引き上げる存在である。
価格は確かに高いが、音楽を心から愛する者にとって、その対価は決して高くない。